「シャネル」の検索結果

2025年展覧会ベスト10

●Bunkamuraの未来を照らす新しいアート体験2025 (Bunkamura B1F)

●Synthetic Natures もつれあう世界:AIと生命の現在地 (シャネル・ネクサス・ホール)

●ブルガリ カレイドス 色彩・文化・技巧 (国立新美術館)

●INTO THE WILD( メゾン ドゥ パンテール カルティエ)

●感情、表徴、情念 ゴダールの「イメージの本」について (王城ビル)

●ペドロ・コスタ インナーヴィジョンズ (東京都写真美術館)

●ルイジ・ギッリ 終わらない風景 (東京都写真美術館)

●社会と感性を結ぶアート展 (オルタナティブスペース「clinic」)

●富田直樹 Fast-風土 (MAHO KUBOTA GALLERY)

●木村直人写真展「宮入法廣の刀(みやいりのりひろのかたな)」 (Kiyoyuki Kuwabara Accounting Gallery)

2022年展覧会ベスト10

●OP.VR@PARCO(PARCO MUSEUM TOKYO)

●人間の才能 生みだすことと生きること(滋賀県立美術館)

●機能と装飾のポリフォニー(豊田市美術館)

●アレック・ソス(神奈川県立近代美術館 葉山館)

●Chim↑Pom展:ハッピースプリング(森美術館)

●ミロ展 日本を夢見て(Bunkamuraザ・ミュージアム)

●写真新世紀 30年の軌跡(東京都写真美術館)

●ジェーン・エヴリン・アトウッド展「Soul」(シャネル・ネクサス・ホール)

●アントワン・ダガタ展(MEM)

●尾崎豊展(松屋銀座8階イベントスクエア)

2022-12-30

『テストトーン VOL.35』 さまざまなジャンルのアーティスト / 西麻布スーパーデラックス

先端は、無料です。

値上げの話題が多い中、心あるブランドは、無料の価値を知っている。

銀座メゾンエルメス10階のル・ステュディオでは、毎週土曜日に映画が上映され、予約さえすれば無料で見ることができる。現在の上映作品はロッセリーニの「インディア」(1959)で、イタリア語ではなくフランス語バージョンというのが残念だけど、お洒落して行く価値のあるプライベートシアターだ。

シャネルの「モバイルアート展」は、香港、東京が終わり、今後はNY、ロンドン、モスクワ、パリへとパビリオン(byザハ ハディド)が移動するが、シャネルバッグをテーマに20組のアーティスト(ブルー ノージズ、ダニエル ビュレン、デヴィット レヴィンソール、ファブリス イベール、レアンドロ エルリッヒ、イ ブル、ロリス チェッキーニ、マイケル リン、荒木経惟、ピエール&ジル、ソフィ カル、田尾創樹、スティーブン ショア、スボード グプタ、シルヴィ フルーリ、束芋、ヴィム デルヴォワイエ、楊 福東、オノ ヨーコ、Y.Z.カミ)が構築したインスタレーションツアーもまた無料。各自がヘッドフォンとMP3プレーヤーを装着し、ナレーションの指示と音楽に身を任せながら回遊するサウンドウォーク(byステファン クラスニャンスキ)は快適だけど、日本語のナレーションはやや鬱陶しかった。ただし、フランス語か英語を選べばジャンヌ・モローの声だったんだって! 彼女が終始耳もとでナビしてくれるのであれば、シャネルのバッグ1個くらい買ってもいい。

7月8日、西麻布のスーパーデラックスで「test tone vol.35―Festival of Alternate Tunings」というイベントが開かれた。これもまた無料。エルメスやシャネルのような予約も不要。ノーチケットで気まぐれに行けるライブっていい。飲み物は好きなだけ買えるわけだし。さまざまなアーティストが演奏する中、私はすごいバンドを見てしまった。いや、バンドじゃなくて、一夜限りのコラボレーション。

●山本達久 ・・・ノイズドラム
●L?K?O ・・・ターンテーブル
●大谷能生 ・・・サックス
●Cal Lyall ・・・ギター
●onnacodomo ・・・VJ

漢字と英語と記号とローマ字が混在する字面からして、全然バンドじゃないし、まとまってない。さて、この中で外国人は誰でしょう? 女性は誰でしょう? 電気系の楽器はいくつ? ドラムだけ「ノイズ」をつけてしまったけど、ほかのパートにも形容詞をつけたほうがいいかもしれない。音楽の最前線は、言葉が定まってなくて刺激的だ。

セッションは即興的だが緻密であり、調和していないが引きこもってもいなかった。楽器としてのパワーを感じるターンテーブルには新しい時代を確信したし、ドラムの爆発ぶりにもぶっとんだ。繊細にして大胆不敵なサックスは、アナログという言葉の語源が「自由」であることを思い出させた。と、思わずでたらめを書いてしまいたくなるほどだが、これらの音に一層ミスマッチなギターが加わり、奇跡的ともいえるキャッチーなノリの中に荒涼としたダイナミズムが生まれていたのである。いろんな素材が料理され、3面の壁いっぱいに映し出されるビジュアルパフォーマンスにもダイレクトなライブ感があり、風景が映るわけでもないのにロードムービーみたいだわと感動しているうちに演奏は終わってしまった。このセッションにはタイトルがなく、二度と聴くこともできない。書いておかないと忘れちゃうじゃん。

旅とロートレアモンの詩とサックスと物理学が荒削りにミックスされたジム・ジャームッシュの処女作「パーマネントバケーション」(1980)が最初に上映されたときも、こんな感じだったのだろうか?

2008-07-13

『シェフ、板長を斬る悪口雑言集(1、2)』 友里征耶 / グラフ社

レストランという名の、固有の物語。

本書に取り上げられている店は、フードジャーナリストたちが絶賛するレストランや料理店。東京のフレンチ、イタリアン、和食店が中心だ。

著者が批判するのは、店や料理人に都合のよい情報だけを垂れ流す自称料理評論家や、実名取材で受けた特別待遇を店の評価につなげるジャーナリスト。あるいは、テレビでは美味しい料理をつくるのに店では美味しくないものを出す鉄人や、バブリーな再開発ビルに他店舗展開したせいでモラルが低下したシェフなど。

いまいちかなと感じていた店が厳しく批判されている場合、そこまで言うか?と思いながらも笑いながら読んでしまう。そうそう、そうなのよねー。
例1「こんなイタリアン、いや、お店が存在していてよいのだろうか。味、サービスどれをとってもシャレにもならない」(笄櫻泉堂/神宮前)
例2「こんなはずではない、何かの間違いだろう」(トゥール・ダルジャン/ホテルニューオータニ)

自分が素晴らしいと思う店が絶賛されていれば、安心して読める。うんうん、最高だよねー。
例1「やはり今現在では東京でいちばんおいしいフレンチだ。料理だけでなく、ワイン、サービス、価格などのバランスを考えても最高峰だろう」(ロオジェ/銀座)
例2「人気イタリアンとしては価格もリーズナブル。リピートしてメニューを制覇したくなる店と考えます」(トラットリア・ダ・トンマズィーノ/北青山)

だが、自分が素晴らしいと思う店の評価が低かった場合には、心をかき乱される。あんなに美味しかったのにー? なんでなんで!
例1「さすが隠れ家レストランだ。うまくなくて高かった。それにしても、あの階段は危ない。保険に入っているのかな」(SIMPEI/上大崎)
例2「ネタ、揚げ方などに傑出したものを感じない。近くに行った際には、一度は立ち寄ってみてもよい店と考えます」(てんぷら深町/京橋)

そして、最も孤独を感じるのが、自分が最低と思う店が好意的に書かれていた場合だ。
たとえば、なぜか皆が絶賛する超人気イタリアンA。仕事場に近いため「来週あそこでランチしよう」などと言われるたびに、満席とわかっていながら電話してみるが、応対は決まって高飛車。電話するだけで嫌な思いをさせられる店のサービスがどんなものかって、そりゃあもう! 著者にだけはわかってほしかったのに。

総合的に考えると、いちばん面白く読めるのは、行ったことのない店がメッタ斬りされている場合かもしれない。たとえば、恵比寿の「ル・レストラン・ドゥ・レトワール」。著者はこの店のシェフに「さっさと出て行け、二度と来るなよ、塩をまいとけよ」という捨て台詞を吐かれたという。私は、著者の態度に問題ありと感じたが、シェフも相当くせのある人みたいだ。1冊めのこの対決だけでも面白いのに、著者はなんと、2冊めでこの店を再訪しているのである。

さて、今、レストラン業界&ファッション業界で最大の話題といえば、12月4日にオープンするシャネル銀座ビルの「ベージュ東京」だろう。フランスのトップシェフ、アラン・デュカスとシャネルのジョイント・ベンチャーで、ビルの設計とダイニングのデザインはピーター・マリノ、ユニフォームのデザインはカール・ラガーフェルド、キッチンのデザインはポール・ヴァレ、総支配人はソムリエ界の石田純一こと渋谷康弘氏である。既に予約受付が始まっており、クリスマスや土日のディナーは満席になりつつあるらしい。コースの価格しか発表されておらず、どんなものが食べられるのかわからないのに、だ。
私は、この店に対する著者の評価を、予約したいなという気持ちだ。

2004-11-15

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『VOGUE写真展』 ヴォーグ ニッポン / 日経コンデナスト

企画力は、不況をふきとばす。

かつてブルータスを「広告のとれる雑誌」に生まれ変わらせたカリスマ編集長、斉藤和弘。彼は昨年、VOGUEの日本版「VOGUE NIPPON」を発行する日経コンデナストの社長に抜擢され、編集長を兼任している。

VOGUEは1892年アメリカで創刊され、「VOGUE NIPPON」は1999年、世界で12番目のVOGUEとして日本で創刊された。だが当初は「いつ休刊になるか」と囁かれ続け、活気が出てきたのは斉藤氏が編集長になってから。今では欧米のプレステージブランドの広告が似合う「唯一のコンサバでないモード雑誌」になった。

プレステージブランドは、広告の媒体を選ぶとき、ブランドイメージにそぐわない雑誌を排除する。記事を書きたいといっても撮影商品を貸し出さないし、取材にも応じない。もちろんプレス発表会に招待するはずもない。だから、多くの雑誌では、仕方なく読者や編集部員の私物を撮影する。イメージの上に立脚するブランドは、イメージが壊れたらおしまいなのだから、媒体選びにこそ細心の注意を払わねばならないのだ。

だからといって、ブランドを無条件に礼讃し「広告」と「広告のような記事」しか載せない「コンサバなプレステージ雑誌」なんて、つまらない! その点「VOGUE NIPPON」は、雑誌自体をブランド化することに成功したと思う。つまり、ブランドの広報担当者が積極的に新製品を売り込み、タイアップを申し込みたくなるような斬新な視点をもつ雑誌づくりを、ユニークな企画力で実現した。

今回の写真展は、そのことを証明している。展示の内容は、US VOGUEやUK VOGUEに掲載された1930年代から最近の写真まで50点ほど。銀座に店を構える7ブランド(バーバリー、ブルガリ、カルティエ、ハリー・ウィンストン、エルメスルイ・ヴィトンティファニー)の伝説的な写真である。1つの雑誌が7社を束ね、銀座という街と提携し、こんな写真展をさらっと企画しちゃうなんて面白いし、すごいことだ。

展示会場となったシャネル銀座ビルは、シャネルの日本法人がダイエーから64億円で買い上げたといわれるビルだ。赤い布でおおわれた特設会場には軽快なラウンジ系ミュージックが流れ、ホルスト、バート・スターン、アーサー・エルゴート、エレン・フォン・アンワースセシル・ビートン、シュタイケンなどの写真が年代もブランドもばらばらに並んでいる。まず写真を見て、ワインのブラインドテイスティングみたいに、年代とブランドとカメラマンを想像したりするのも楽しい。とりわけアーヴィング・ペンの古い写真の新しさといったら!

階段を昇るとシャンパーニュまたはソフトドリンクのサービスを受けることができる。ソファでくつろぎ、あるいは階下の展示を見下ろしながら喉をうるおせるのだ。シャンパーニュの銘柄は、モエ・ヘネシー・ルイヴィトングループのモエ・エ・シャンドンで、今月号の誌面にちゃんとタイアップ記事がある。

これは、マスコミ向けの発表会や内輪の展示会ではない。誰でも無料で入れる写真展である。最近、ワインをサービスしてくれるブランド店も多いようだが、この会場では何も売っていない。完全な読者サービスなのだ。

「美術展はキュレーターがアーティストとコラボレートする時代」(by中原祐介)になってきたと聞くけれど、キュレーターとしてのVOGUE NIPPONの手腕は鮮やかで、今後のコラボレーションからも目が離せない。

*シャネル銀座ビル(銀座中央通り・松屋向かい)にて10月27日まで開催
*VOGUE NIPPON 11月号に 15点掲載

2002-10-27